No.042 犬楽/室内犬管弦楽団、石田順治(violin)、登敬三(sax)、植田秀哉(piano)

『犬楽-INUGAKU-】
室内犬管弦楽団、石田順治(violin)、登敬三(sax)、植田秀哉(piano)
JMCK-2003

¥2,500 (税込)

JMCK-2003「犬楽-INUGAKU-」

室内犬管弦楽団、石田順治(violin)、登敬三(sax)、植田秀哉(piano)

2,500円(税込価格)

1 坂道 Sakamichi  登 敬三

2 午睡 Hirune  登 敬三

3 Wake Up~おひょいの目覚め  植田 秀哉

4 ウルワトゥ uluwatu 石田 順治

5 トゥクマンの月 Yo Le Canto A La Luna  Atahualpa Yupanqui

6 Stay Short  大原 裕

7 子供の水遊び ~ベトナム水上人形劇より

 Child's Play On The Water~Music from Vietnam Water Puppet Show

プロフィール:

登敬三 1960年兵庫県生まれ。 大学入学時よりサックスを始める。 在学中は、Big Bandのバンドマスターを勤める一方、京都のライブハウスを中心に演奏活動を始める。 1989年に渡米、ニューヨーク ハーレムを中心に演奏。 'Big' John Patton (org) Ruben Willson (org) Jeff Brown (org) Joe Dukes (dr) Jimmy 'Preacher' Robins (org) らと共演する。 1990年帰国後、市川修 (pf) バンドに参加する一方、船戸博史 (b) 岡本博文 (gt) と、自己のバンドを始める。 その他フリー インプロビゼイション、ブルース等のセッションや不破大輔 (b) による"渋さ知らズ"梅津和時 (as)、 大仕事のロッドウイリアムス (pf) オー ケストラや、PigFat Pigsにも参加、幅広い活動を行う。 1994年に船戸博史、西山元樹 (gt) 中村岳 (ds) による Super Serious でファーストCDをリリース。 その後、自己のバンド No WaveやPig Fat Pigs、井崎能和(ds)とのDUOユニット狐天狗、 小山彰太 (ds) 林栄一 (as)芳垣安洋 (ds) 内橋和久 (gt) 羽野昌二 (ds) 沖至ユニット 藤井郷子(p)らとのセッションで活動。

石田順治 1950年、京都生れ 7才頃から7年間クラシックバイオリンを習う。中学生のころフォークソングやカントリーミュージックに出合い高校、大学を通じてブルーグラスバンジョー 奏者として活躍。その後、米国人とフォークロックバンド"TEA"を結成、そのころから再びバイオリンの演奏を再開する。以後カントリー、ブルース、インド音楽、邦楽など様々なジャンルのユニットと共演するかたわら、ソロとしてはダンスと音、花と音、香りと音、自身で撮った写真と音のコラボレーション 等、多彩なイメージと音との出会いをコンセプトに即興演奏による創作活動に力を入れる。それらの音楽の中では調和や繊細さといった内面的な事に意識が向くが、犬楽の中では三人三様の緊張感や出合頭のハプニングの面白さを追及。

植田 秀哉 1959年8月6日 博多生まれ。80年代なかばより、京都を中心に演奏活動を開始。 so what、井上 智グループ等、JAZZの世界に入り込む、後に神戸 サテン・ドールのハウス・ピアニストとして多くの歌伴奏をこなす。 90年代後半からはジャズにこだわらず多種多様な音楽に対応すべく セッションを繰り返す2003年犬楽結成に参加、現在に至る。

バンドプロフィール

石田・登・植田の頭文字でINU。室内犬管弦楽団、略して犬楽(いぬがく)となっております。 モンゴルの曲でオヨウダイという曲があるのですが、 それは馬頭琴で演奏されていて とても美しい曲です。 犬楽でもレパートリーの1つで、ヴァイオリン(I)とサックス(N)2人だけで演奏する事となっています。 ちょっと汚い話なのですが・・・「演奏中にトイレに行きたくなったらどうするか」というのがミュージシャンのあいだでは重大な問題でして、 なかには他の人がソロをしている間に悠然とステージを降り、用を足した後 なに食わぬ顔で戻ってくるという人もいますが。 しかしながらこのバンドは3人だけ。しかもピアノの場合抜けるとその場で曲が崩壊という場面も多々あるわけで、 そこでトイレ率の高いピアノ(U)がもよおした場合 即座に曲順変更、オヨウダイ という取り決めがされました。 それが高じまして犬楽のメンバー間では普段からトイレに行くことを 「ちょっとオヨウダイ行ってくる」と言うようになり、 最近では 大の場合「オヨウダイ」 小の場合「オヨウショウ」と言うようになってしまいました。 オヨウダイを作曲された方、どうもごめんなさい。

ライナーノーツ 田中啓文[小説家]

スタートボタンを押すと、一曲目の冒頭、いきなり三人の音が、メロディーが、リズムが爆発し、聴き手の心をつかむ。巧みなつかみかたなので気づかないだろうが、実はほとんどわしづかみに近い状態なのだ。 この音楽はあまりに甘美だ。つややかな音色を誇りつつ、触手のようにからみついてきて、官能のツボを刺激しまくるヴァイオリンに陶然としていると、サックスが眼前、巨大な縄文杉のようにそそりたち、その枝葉はみるみる天を覆うほどに広がっていく。疾駆するピアノは空間を埋め、つなぎ、ほどく。室内楽という言葉にだまされてはいけない。このトリオはオーケストラだ。嘘だと思ったら聴いてみよ。本当にドラムもベースもいないのか、とメンバー表を見直したくなるほどのスピードとスペースにあふれているではないか。注意ぶかく聴けばそのわけがわかる。ときにサックスがドラムになり、チューバになり、ピアノはベースになり、チェロになり、ヴァイオリンがトランペットになり、歌手になっているからだ。いや、楽器だけではない。ここには鳥や象や豹や虫や・・・いろいろな生物までもが参加しているのではないか・・・そんな錯覚におちいる。この音楽はあまりに危険だ。あいまから蜂蜜がしたたりおちているような、甘い、甘い、甘い、耳に媚びる旋律に身体をまかせているうちに、いつのまにか自分が演奏家とほんの数センチしか離れていない場所まで来ていることに、聴き手は唐突に気づかされる。甘いと思えていた旋律が、実は激しく狂おしいパッションを秘めた凶器だとわかったときはすでに遅く、猛毒をたたえた壺に落とされ、もがけどもあがけども出ることはできない。まるで食虫植物だ。各人のオリジナルを中心とした選曲もすばらしいが、うれしかったのは、六曲目に二〇〇三年末に不慮の事故でなくなったトロンボーン奏者大原裕の曲が収録されていることだ。「SIGHTS」とはまったく異なった編成で演奏される今回のヴァージョンを聴くと、「室内犬管弦楽団」の絶妙な解釈に驚かされるとともに、故人の曲の魅力を再認識させられた。このアルバムにおさめられた演奏は、どのような聴きかたをしてもかまわないと思うが、できれば可能な限り大きな音で聴いてほしい。三人の奏者は自分を抑えることなく解放し、自己の楽器を楽器本来の音色で朗々と弾き鳴らし、吹き鳴らし、音量もプレイも普段のままぶつけあっている。そして生みだされる奇跡のようなバランス。アコースティックとはまさにこのことだ。よく「三者が対等のトリオ」というが、この「室内犬管弦楽団」は音楽的な対等にこだわらなくとも、三人それぞれの「存在感」が対等なのだ・・・。などとごちゃごちゃ書きつらねるのがばかばかしくなってきた。無意味な小理屈をこねるよりも、もう一度CDのスタートボタンを押す。それで万事解決である。懐かしくて新しい音楽がふたたび流れだす。  この音楽はあまりに・・・そう、あまりに楽しすぎるのだ。

録音ノート レコーディングエンジニア 五島昭彦

本CDの録音は無指向性の超小型マイクロホンを2本だけ使用したワンポイント収録である。前半4曲は滋賀県守山市のスティマザールで収録した。同ホールは調律師である上野泰永氏がピアノの実験場としての発想で創ったものである。同氏の建物全体を楽器ととらえた「調律した空間」の中で、同氏開発のピアノインシュレーター『スティムフューチァーStimmfuture』(グランドピアノ 本来の能力を引き出せるよう、浮かすという発想の元に製作)を使用し、音程感の有る調律と相俟って、オーケストラの如く朗々と響きわたる犬楽サウンドが生み出された!(ライブで親しんだ犬楽ファンは面食らうかも・・・)。後半3曲の犬楽のホームグラウンドでもある兵庫県伊丹市のライブスポット「STAGE」でのライブを収録した。(こちらは犬楽ファン御馴染のサウンド!)どちらも生生しく実体感のある音が体験して頂けると確信している。